事業承継と財産承継経営と所有は別か?
NHKの朝の連続テレビドラマ「どんど晴れ」、ご覧になった方も多いことと思います。ドラマが始まった頃は、“都会の現代女性が、老舗旅館で、いじめにあいながらの女将修行”という設定なのかと思っていましたが、終盤になって、「こういう事業承継のやり方もあるのだろうか。」と考えさせられる展開になりました。
社長とともに長年会社経営に従事してきた社長の息子が居るにも関わらず、会社勤めをしていた従弟を会社に入れ、次期社長にすると言うのです。
自分が継ぐものとずっと思ってきた社長の息子にとっては、寝耳に水の話です。
しかも、次期社長の椅子を巡って争った二人が、一方は株を持たない社長に、他方はその会社の半数の株を持つ筆頭株主になるというのですから、果たしてその後の会社経営が上手く行くのかと危ぶまれます。
確かに、株式を全く持たない雇われ社長というのがないわけではありませんが、その数は多くはありませんし、中小企業においてはなおさら稀な例と言えましょう。
ところで、株を持たない社長は、とても不安定な立場に置かれます。社長といえども株主には逆らえません。なぜなら、社長の首は株主の意向にかかっているからです。
中小企業では、社長の強力な指導力で会社を大きくするというパターンが多いと思われます。ワンマン社長が多いゆえんでもありますが、その社長の権力の背景は、やはり株の所有です。
もっとも、“経営の建て直しのために招聘された社長”というのであれば、株の所有とは無縁な存在であることもうなずけますが。
しかし、その場合であれば、会社の再建が終わったら、その社長は会社を去ることになります。
中小企業において会社を継ぐということは、社長になるということと同時に、その会社の資産も譲り受けるということなのだと思うのです。株の議決権、これが重大事なのです。そのために、議決権のない株式を発行したり、株式を贈与したり、と苦心するわけですから。
「社長は二男に、株は長男に」という事業承継のやり方は、後に争いの火種を残すようなものだと思うのですが、皆様はどう思われますか?
後継者候補が二人いる
後継者が居ない社長から見たら、後継者の候補が二人いるというのは、とても羨ましいことだと思います。
しかし、一人ではなく、二人いるということで、また別な悩みもあるのだと思います。
アメリカのある有名な企業では、社長候補数名を競争させながら育て、その過程で社長候補を絞っていき、結果として社長になれなかった人は、社外に活躍の場を求めて会社を去って行った、という話を聞いたことがあります。
官僚の世界でも、事務次官になれなかった官僚は、定年を前に天下りをして官庁を去っていきます。
複数の後継者候補がいた場合、どの組織であっても、後継者になれなかった人間の処遇が大変難しく、結果として会社を離れる場合がほとんどのようです。
会社をもう一つ作る
一つの会社を兄弟二人でやっていくことがそう簡単ではないと感じておられるからこそ、もう一つの会社を新たに設立して、今の会社は長男に承継させ、二男には新しい会社を任せようと思う、ということになるのだと思います。そういう社長さんのお話を何度かお聞きしています。
準備万端よろしく、将来のことを考えて、早い時期から複数の会社を経営しておられる社長さんもいらっしゃいます。
しかし、複数の会社を経営しているとはいっても、それぞれの会社が単独で経営できているかと言えば、なかなかそういうわけにはいかず、中心となっている会社に依存している場合が多いというのも実態です。
新たに設立した会社に、今まで一つの会社で行ってきた事業の一部を移すという場合には、それによって、会社全体のバランスや力が削がれることにはならないかという点についても、是非検討してみていただきたいと思います。取扱商品による繁忙期の違い、利益率の違い、商品の組み合わせ等、利益の出ない部門の存在が、利益率の高い部門や商品の販売に貢献しているということも多々あるものです。意外と見落とされがちです。
また、もう一方の会社が、もとの会社と同種の事業を行う場合には、競業の問題が起こります。営業エリア、顧客情報等につき、文書による取り決めをしておく必要があるでしょう。
不動産をどう分ける
事業承継は会社の相続です。これをスムーズに行うためには、経営の承継と会社の株式の承継、会社が使っている不動産の承継が必要になります。当然に、遺産分割の問題が発生します。長子相続の時代とは異なり、現民法では子供達には平等の相続権があるとされています。したがって、事業を続けていくためには、会社が使っている不動産をどのように相続するのかが大変重要な問題になってくるのです。遺産分割のやり方によっては、会社継続が困難になる場合もあります。
皆様の会社で使用している建物は誰の名義になっていますか?その建物の建っている土地の名義はどなたになっていますか?
@ 土地・建物ともに会社所有の場合
⇒ 会社の株を承継すれば会社が使っている土地建物も自動的に承継されます。すなわち、“会社の株”を相続することで、会社が使っている不動産も相続することができるのです。
A 社長個人の土地の上に会社名義の社屋が建っている場合
⇒ 会社に借地権が有るか否かによって、株の評価が異なります。それによって、社長の所有されている土地の評価も変わります。 会社の株の承継だけではなく、建物の建っている土地の承継も必要です。それができない場合には、土地を相続する人との間に借地契約等を結ぶ必要が生じることもあります。
B 土地も建物も社長の個人名義である場合
⇒ その土地・建物を相続等によって取得することがベストです。どうしても、それができない場合には、今までどおり賃借するか、会社を移転する必要が生じます。
まずは評価を!
日本の高度経済成長期に個人で事業をお始めになり、やがて法人成りによって会社組織にされたという会社も多いと思います。中小企業の場合には、会社が使用している不動産が、社長個人の名義になってことが少なくないのです。うちの事務所でも、“不動産の名義は社長個人”という会社の方が圧倒的に多いのです。
日本の中小企業の多くが、今、事業承継の時期を迎えています。新聞にも中小企業の事業承継対策のための税制措置を盛り込む動きが報道されています。
事業承継は、後継者問題とともに、財産承継問題でもあるのです。そのためにも、財産総額はいくらになるのか。株の評価は?土地の評価は?どの子供にどの財産を相続させるのか。相続税は払えるのか・・・。等、判断の材料を入手する必要があります。
最近は、遺留分減殺請求も増えてきています。遺言書を書く場合でも、遺留分を侵害しないように、配慮した遺言書を書いておけば、申し分ありません。そのためにも、“まずは評価を!”ですね。
更新履歴


